映画「ドラえもん のび太とアニマル惑星」は、1990年3月10日に公開された劇場版第11作目です。
僕が初めてこの作品を見たのは、劇場ではなくDVDでした。
当時はまだ小学生だったのですが、深く考えなくても とても楽しく見れる作品でした。
・・・しかし、その時に強烈に記憶に残ったシーンがありました。
敵の勢力が逮捕され連行されていくとき、たった数秒間だけ素顔が明かされ、そして刹那的に去っていく悪の親玉。
このシーンが強烈に印象に残っていて、二十年以上たったある日なんとなくネットで調べてみました。
すると、多くの人たちがこの人物に強烈なシンパシーを抱いていたのです。
その人物こそが、この作品のラスボスである「ニムゲ総長」なのです。
アニマル惑星のあらすじ【ネタバレ注意】
ある夜、のび太はピンクのもやの中を走っていた。
そのもやの先には、動物たちが暮らす平和な星「アニマル星」があった。
翌朝、そのできごとを話しても誰にも信じてもらえず、あれは夢だったと思い込むのび太。
しかしその夜、再びピンクのもやが現れ、のび太は再度アニマル星へと行くことに。
アニマル星は、軍隊も兵器も存在しない非暴力の世界。
豊かな自然に満ちあふれ資源も豊富にあるため、人々は平和で幸せに暮らしている。
ドラえもん一行は、アニマル星の人々と平和に交流を深めていく。
そして、アニマル星の連星である「地獄星」
そこには、ニムゲという人類が住んでいる。
・・・地獄星は、かつては高度な文明が栄えていたが、1000年前の核戦争により星全体が荒廃していた。
現在は、汚染された環境の中、スクラップ置き場から資源を調達して暮らしている。
ニムゲには、2大勢力が存在する。
過激派による秘密結社「コックローチ団」と、
治安維持の組織「連邦警察」である。
コックローチ団は、豊富な資源を持ち 暴力という抑止力を持たないアニマル星の存在を知った。
コックローチ団はアニマル星への侵略計画を開始。
ドラえもん一行とアニマル星の人々は、秘密道具で応戦し、そして接戦をくりひろげる
そのなか、突如として連邦警察が乱入。
圧倒的な正義の暴力でコックローチ団を打破。
そして、連邦警察にコックローチ団は連行されていき、アニマル星には平和が戻った。
ニムゲ総長とは
秘密結社コックローチ団のボス。
地獄星で生まれ育った。
多くの隊長・隊員たちを従えている。
ドラえもん映画の敵勢力の登場人物は、絶対悪キャラがほとんどだが(竜の騎士や雲の王国などの和解エンドを除く)
ニムゲ総長は、戦いの最中に「同志諸君を蒸し焼きにするわけにはいかない」と、同志を大切にする人間性を見せている。
そして、戦いに敗北し連邦警察に連行される最中
「すまん、マスクをとってくれ」
と頼む。
そして、深呼吸をして微笑みながら言った、
「素晴らしい空気だ。」
という たった一言は、ドラえもん映画でも屈指の名セリフ・名シーンとして語り継がれている。
普段は防護服に身を包んでいるニムゲ総長の素顔が明かされるのは、このワンシーンの数秒間のみ。
識者たちの間では「全ドラえもん作品中 一番のイケメン」との呼び声が高い。
ネット上には、たくさんのイラストや短編小説まで存在します。
(短編小説「秘密結社コックローチ 01〜03」は映画を見た後に読むのがオススメ ⇒ 別タブで開く)
ちなみに、”ニムゲ”という名前は”人間”をもじったモノ。
映画のエンディングで流れる武田鉄矢氏による主題歌「天までとどけ」は、”人間の成長”をテーマにした楽曲なのですが、
このニムゲ総長の心情を表した歌詞だと思って聞くと、とても深く感じます。
(主題歌「天までとどけ」歌詞&視聴 ⇒ 別タブで開く)
たった一言で、重厚なアナザーストーリーを想像させる
ドラえもん映画 屈指の名シーン
戦いに敗れたニムゲ総長は、手錠をかけられ連邦警察の巨大な母艦に飲み込まれようとしています。
死刑を免れたとしても、長い年月を牢獄の中で過ごすことになるでしょう。
そんな状況なのに、アニマル星の美しい自然を改めて目の当たりにし、地獄星で生きるために身に着けた防護服を脱ぎ捨ててみたくなったのです。
そして、手錠をかけられ連行されている最中だというのに、これから法により裁かれる運命だというのに、
深呼吸をして心からの微笑みを浮かべ
「素晴らしい空気だ。」
と、心からの称賛を贈ります。
この数秒間、この一言だけで、ニムゲ総長の生い立ちのストーリーを想像したくなります。
どのように生まれ、どのように地獄星で生きて、どのような経緯で総長になったのか・・・。
たった数秒のシーンがあるだけで 重厚なアナザーストーリーが展開される、非常に情報密度が高いシーンだと言えるでしょう。
スピンオフ映画を創り、往年のファン・新規ファンを
ドラえもんという超優良コンテンツに超大量集客
アニマル惑星を観た人の中に、ニムゲ総長に強い興味を抱く人は一定数います。
「ニムゲ総長」で検索すれば、多くの情報が出てくるのがその証拠です。
アニマル惑星の裏主人公といえるほどの人気があるのです。
多くの人が強い興味を抱く対象は、マーケティングにおいて非常に価値が高いです。
なので、ニムゲ総長のストーリーを描いたスピンオフ映画を創れば、多くの人が興味を持つでしょう。
かつてドラえもんという作品を観なくなった大人世代にも、響く人は必ずいます。
また、新規ファンをつくることもできます。
実写映画にして、人気が高い俳優・女優を起用すれば、その俳優・女優たちのファンが観てくれます。
すると、本家であるアニマル惑星の方も観てくれるようになります。
また、アクション映画要素を強くすれば、アクション映画ファンにもアプローチできます。
加えて、人気が高いアーティストに楽曲を依頼すれば、そのアーティストのファンにもアプローチできます。
つまり、様々な切り口からドラえもんという超優良コンテンツ郡に新規客を集客できるのです。
過去の具体例:
「STAND BY ME ドラえもん」は、
大人世代にアプローチするマーケティング戦略だった
例えば、2014年に公開され興行収入83.8億円を記録した3D CG作品「STAND BY ME ドラえもん」では、大人世代にアプローチするマーケティング戦略がとられました。
そのわかりやすい具体例が
「すべての、子ども経験者のみなさんへ。」
という、大人世代に向けたキャッチコピーです。
大人に向けたマーケティングの理由は、
1.ドラえもんというコンテンツ(マンガ・アニメ・映画)を観なくなった大人に、再び 興味を持ってもらう
2.”子どもの同伴者”として、親子で劇場に足を運んでもらう
といったところだと思います。
そして、高い満足度を感じてくれた大人は、この「STAND BY ME ドラえもん」をキッカケとして、ドラえもんという作品コンテンツ郡に再びカムバックしてくれます。
結果、ドラえもんという作品は世代を超えて受け継がれていくのです。
ドラえもんという映像作品が半世紀以上にわたって非常に高い人気をキープできている理由は、藤子・F・不二雄先生による原作漫画の人気だけではありません。
映画・アニメ作品の制作会社や藤子プロダクションによる考え抜かれた戦略があってこそです。
過去には、ドラえもんという映像作品が危機に陥ったこともあったのです。
・・・例えば、1973年にアニメ化された「日テレ版ドラえもん」
これは、全国放送されたが視聴率は伸び悩み、わずか半年で終了してしまったのです。
(1989年から再度アニメ化されたテレビ朝日版が、現在まで続いているシリーズ)
また、2005年に行われた大幅なリニューアルでは反発する意見も多く、一時は映画の興行収入も伸び悩んだこともありました。
しかし、その後は爆発的に興行収入を伸ばしています。
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これも、常に試行錯誤された様々な工夫された戦略があってこそ、
それにより、常に新規ファンや かつてのファンを開拓しつづけた努力があってこそなのです。
「現状維持は後退である」という格言があります。
常に試行錯誤を繰り返し進化をしなければ、周りの変化についていけず、いずれは追い抜かれます。
常に戦略を考え続けた結果、動員数が伸びているのです。
(もちろん、これは結果論です。
常に戦略を考え続けても、失敗に終わる事例など いくらでも存在します。挑戦には、敗北するリスクは付きものです。
しかし、現状維持という名の後退を つづける道を選んだら、いずれは終焉を迎えるでしょう。
なので、制作会社や藤子プロダクションは挑戦しました。そして勝ったのです。)
ニムゲ総長の実写スピンオフ映画は、
ダークヒーロー映画要素をアピールすれば
若年層に強くアプローチできる
核戦争により荒廃した惑星で生まれ、悪の組織のボスになり、そして自然豊かな星を侵略し、そして敗北する。
そして、最後に大きなパラダイムシフトを得る・・・。
この大筋の流れは、ダークヒーロー要素を強くすればするほど、パラダイムシフトのシーンが映えます。
なので、ダークヒーロー映画と強調すれば、若年層にも幅広くアピールできます。
そして、本家のアニマル惑星も見てもらえます。
結果、ドラえもんというコンテンツに触れたことの無い人たちにも、ドラえもんに興味を持ってもらうキッカケになります。
「STAND BY ME ドラえもん」が大人世代に向けた集客口だとしたら、ニムゲ総長のスピンオフ映画は、若年層に向けた集客口になるでしょう。
結果、ドラえもんという作品はより多くの世代に親しまれることになるのです。
スピンオフ映画を創るなら
こんなシナリオ、いかがです!?
プロローグ
ニムゲ同士の核戦争により、自然豊かな美しい星が無残に壊滅していく。
つぎつぎに打ち上げられる核兵器が、星のすみずみまで行き渡り、そして破壊・汚染していく。
そんな危機的状況下で、後に神話の中で”神”と呼ばれる とある科学者により、荒廃していく星から無人の連星へと送り込まれる動物たち。
そして神は、動物たちに兵器と宇宙船の開発を禁じた。
1.1000年後。地獄に生まれ落ちた少年
1000年前に勃発したという核戦争により、この星には木も草も生えていない。
・・・まるで地獄みたいに荒れ果てた世界・”地獄星”
その地獄星の、陽の当たらない地下で生まれた少年。
地上に出るときは、防護服の着用が義務付けられている。
ドス黒く よどんだ空の下、スクラップ置き場から再利用できそうな資材を調達する日々。
幼少からの友達が、この星に蔓延する疫病で、次々に命を落としていく。
希望なんて、抱いても辛いだけだ。
どうせ、自分もすぐ死ぬだろう。
2.伝説の理想郷
少年は、両親から伝説を聞かされる。
なんでも、美しい自然にあふれた夢のような世界が、宇宙のどこかに存在するらしい。
この地獄星のような、暗く不衛生な世界ではなく、綺麗に澄みきった空気で満たされた楽園のような世界が。
少年は、両親に聞かされた”理想郷”に関する伝説を、強く信じる。
死んでたまるか。
3.”非現実的な夢”
少年は、理想郷の存在を信じ、いつか行くことを夢見る。
周りの人間は、それをバカにして笑う。
しかし、少年は強く信じている。
理想郷へ行くには、見つけるには、技術が必要だ。
少年は、宇宙を航海するための高度な理論を学ぶため、廃墟となった書院に入り浸り、古代の文献を読み漁る。
4.最期の言葉
両親が、疫病にかかる。
医者も少なく、治療薬を作る原料も調達できない。
政府や、その忠実な犬である連邦警察の上層部の連中が資源の大部分を独占するから。
「おまえは理想郷を見つけて、幸せになれ」
それが、両親の最期の言葉だった。
許さない。
政府と連邦警察は敵だ。
意を通すには、力が必要だ。
高い知力と、強い暴力が必要だ。
5.秘密結社コックローチ団
「理想郷へ。」
同じ志を持つ、同志たちが少しずつ集まってくる。
ほとんどの人間は少年の夢を はなから否定してくるが、同志たちは着実に増えていく。
巨大勢力となっていく。
目的は理想郷へ行くこと。
コックローチ団の勢力拡大を危険視し、邪魔をする連邦警察に対しては、それなりの地位にいる人物の弱みを握り(もしくはでっちあげ)、なんとかやりくり。
また団員に対し、一般市民への略奪行為などは一切を禁じた。
身寄りのない女 子供は、率先して守った。
養子として受け入れてくれる家庭を、独自の情報網で見つけてあげたりした。
6.”総長の座”の重み
コックローチ団は、巨大化した。
しかし、問題も出てきた。
劣悪な環境で、団員たちの争いも絶えない。
団のルールを破る団員もいる。
更に、内部情報が連邦警察に漏れていた。
どうやら団員たちの中に、連邦警察のスパイが潜り込んでいるようだ。
宇宙航海のため理論だけでなく、人心掌握スキルやリーダーシップを高めるため、嘘を見抜くための能力も身につけなければ。
総長としての役目を果たしつつ、よりハイペースで廃墟となった書院に入り浸る。
心理学や帝王学などの文献、他にもありとあらゆる文献を読み、学びを深めていく。
忙しい。
しかし、これが総長の責務。重み。
指導者として、成長していく少年。
7.理想郷を我が手に
両親から聞かされてた伝説は、真実だった。
この地獄星の連星こそが幼少より夢みてきた理想郷、大自然で満たされた惑星だと判明したのだ。
おろかな先祖たちが核戦争を引き起こしたとき、動物たちだけが連星に移住した・・・というアニマル星。
理想郷を ぐうぜん発見したという団員を案内役に、精鋭の団員たちを集めて偵察に行った。
その星は、なんの苦悩もなく、平和ボケした動物たちが のん気に暮らしていたのだ。
なぜ我々がこんなにも苦悩しているのに、次々命を落としているのに、奴らだけ さも当然のように平和に暮らしているのか。
ハラワタが煮えくり返る。
奪還する。
日が暮れる頃、地獄星のアジトに戻り奪還作戦の準備をする。
捕らえた連邦警察のスパイが逃げたらしいが、奪還作戦は知られていない。
計画に支障は、無い。
全団員に奪還作戦決行を伝える。
・・・夜が明けた。
コックローチ団、過去最大にして最重要の作戦が始まる。
アニマル星に向け、全団員 出陣!
8.未知の秘術を使う敵
ついに、アニマル星の理想郷が見えてきた。
しかし、平和ボケした非暴力の星だと聞いていたが、強力無比な兵器を使ってくる。
いつの間に武器を持ったのだ。
いつの間に平和ボケを脱して暴力という自衛策を身に着けたのだ!
たった一発で、仲間の宇宙船がつぎつぎ撃ち落とされ、大地に叩きつけられ、爆発していく。
全7機中3機が撃ち落とされた。3/7の同志たちが命を落とした。
また、森がまるで意志をもった生命体のように、攻撃してくる。
なんなんだ!?
あの未知なる秘術を使うタヌキは!!
廃墟となった書院で学んだ理論の1つ、兵法の理論が根底から瓦解していく。
・・・なら、その原因を排除するしかない。
「森を焼き尽くせ!」
少年時代から、夢に見るほど欲した自然の一部を焼き払う。
胸が痛んだ。
胸の痛みから心を逸らすため、必要以上に高笑いをしてみせた。
・・・その時、後方から連合艦隊が・・・?
連邦警察だ!!
ちくしょう、こんな時に!!!!
作戦は知られていないはず。
なのに、待ち伏せされていた。
タヌキたちとの戦いで こちらの戦力を消耗させられた上に、手の内を知られてしまった!
先日、偵察に来たのがすでにバレていたのか?
あの逃げ出したスパイは、何らかの形でこの作戦に気づいたのか?
同志たちが乗った宇宙船が、再び撃ち落とされていく。
・・・そして、頭上から絶望的に巨大な母艦が、自分が乗った宇宙船を飲み込むように降りてくる。
これ以上、戦っても勝ち目は無い。
同志たちをムダに死なせるだけだ。
夢は、ついえた。
9.両親との約束
金属製の手錠ではなく、縄をかけられた。
一本の長い縄。
同志たちが一本の長い縄で手錠をかけられている。
同志たちが、全く同じペースで歩かされている。
母艦に次々と飲み込まれるように連行されていく同志たち。
我々は、これから裁かれ刑を受けることになる。
ふと思った。
この星の美しい大自然の空気を、防護服の防毒マスク越しにしか呼吸していないことを。
高まる好奇心を抱きつつ、連邦警察の隊員に話しかけた。
「すまん、マスクを取ってくれ」
マスクは取られ、美しい緑に満たされた世界が、肉眼に飛び込んでくる。
無心で、深呼吸をしてみた。
両親から聞かされた理想郷が、同志たちと追い求めてきた理想郷が、ここにあるのだ。
澄み切った空気が、体に行きわたっていく。
・・・いつ以来だろう、こんな感情になるのは。
心の底から、衝動が こみ上げてくる。
「素晴らしい空気だ。」
それは、拘束されて牢獄へと連行される凶悪犯には あまりに似つかわしくない、
夢と希望にあふれた少年のような笑顔だった。
エピローグ
連邦警察の連合艦隊が離陸し、宇宙空間を飛んでいる。
数時間後、地獄星に到着。
珍しく晴れているが、相変わらず殺風景で荒廃した世界だ。
連邦警察の牢獄へと護送されていく。
この地獄星にも、文明社会再建のメドを立てている団体がいると聞いた。
手段は違えど、手段は悪と善であれど、”美しい自然を望む”という志は共通している。
どうせ同じ志なら、悪より善がよい。
・・・と言っても、仮に極刑をまぬがれて刑期を終えた後、その団体に協力したいと言っても警戒されるだろう。
当然だ。
なら俺は、いや”俺たち”は別の方法で理想郷を手に入れる。
まだまだ、学ぶことがたくさんある。
・・・新しい夢ができた。
「この地獄星に、理想郷を創国する!」
絵師さんに、映画ポスター書いてもらった
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